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中央銀行によるビットコイン技術の活用と「デジタル通貨」の構想

Makaule/Bigstock.com

 

米IBMが主要通貨のデジタル化に向けて、ビットコインの基盤技術である「ブロックチェーン」の適用を検討していると3月12日米ロイターが報道しました。まだ検討初期段階で何も決まっていないとはいえ、米連邦準備銀行など主要中央銀行ともインフォーマルな議論を続けているとのことです。

本稿では、「ブロックチェーンによるデジタル通貨」とはどのようなものか、考察してみたいと思います。

ブロックチェーンとはビットコインの基盤技術の一つで、全ての取引を記録した大福帳。全世界に公開されていますが、暗号技術の活用によって改ざんは不可能と言われています。

ビットコインの特徴は、そのブロックチェーンを管理する単一の主体が存在せず、政府や中央銀行の力の及ぶ範囲の外で分散管理されている点です。分散管理されていること自体をビットコインの魅力と捉える人もいれば、危険性と考える人もいるようです。

今回の米IBMの構想は、例えばドル取引にブロックチェーンを用いることで、資金移動や決済の即時化と低コスト化を実現する、というもの。ブロックチェーンは中央銀行(ドルの場合は米連邦準備銀行、ユーロの場合は欧州中銀)によって集中管理し、システムに参加するプレイヤーに公開とし、一定の手続きを通して記入可能とします。

例として、この構想を日銀が実現した場合にどうなるかを考えてみるとわかりやすいかと思います。私たちは既に、「お金」を、財布の中のお札と硬貨、そして銀行口座の残高という数値データ、など複数の形態で保有しています。それぞれの形態にできること・できないことがありますが、私たちはそれらを全て「お金」と認識していて、その単位も「円」です。この構想が実現すると、「お金」の保有形態に「デジタル通貨」という新たな形態が出現します。デジタル通貨として保有している「日本円」の取引は、日銀の運営するブロックチェーンへの書き込みによって確定します。ビットコインと同様に即時決済することができ、また仲介業者がいないことから低コストで資金移動を行うことができるのです。米IBMの構想では、このデジタル通貨は、ウォレットアプリによって銀行口座と紐づけられているとのことですので、口座残高とデジタル通貨は相互に変換可能と想像できます。

ビットコインとの相違点としては以下が挙げられます。

  • ビットコインは新たな通貨。デジタル通貨は、既存通貨の新形態にすぎない。
  • ビットコインの供給はビットコインシステムが管理しており、「採掘」によって通貨供給される。デジタル通貨は中央銀行によって従来どおり通貨供給される。

ロイター報道ではIBMの議論相手として米連邦準備銀行が挙げられていますが、英イングランド銀行も2014年9月の報告書にて、ブロックチェーンのような分散取引台帳技術と「重要なイノベーション」と位置付けており、その活用を今後の重要研究テーマの一つとしています。中央銀行にとっても消費者にとっても利点のあるシステムにするにはどうすべきか、という観点で議論が進められている模様です。

欧米で盛り上がりを見せているビットコインとブロックチェーン。日本の決済業界は2020年オリンピック/パラリンピックに向けての動きが活発ですが、ブロックチェーンという新技術で円貨と決済をどう変えていくべきか、我々も議論すべき時期にきているようです。

参考情報

中央銀行によるビットコイン技術の活用と「デジタル通貨」の構想

森岡 剛2015.03.17

Makaule/Bigstock.com

 

米IBMが主要通貨のデジタル化に向けて、ビットコインの基盤技術である「ブロックチェーン」の適用を検討していると3月12日米ロイターが報道しました。まだ検討初期段階で何も決まっていないとはいえ、米連邦準備銀行など主要中央銀行ともインフォーマルな議論を続けているとのことです。

本稿では、「ブロックチェーンによるデジタル通貨」とはどのようなものか、考察してみたいと思います。

ブロックチェーンとはビットコインの基盤技術の一つで、全ての取引を記録した大福帳。全世界に公開されていますが、暗号技術の活用によって改ざんは不可能と言われています。

ビットコインの特徴は、そのブロックチェーンを管理する単一の主体が存在せず、政府や中央銀行の力の及ぶ範囲の外で分散管理されている点です。分散管理されていること自体をビットコインの魅力と捉える人もいれば、危険性と考える人もいるようです。

今回の米IBMの構想は、例えばドル取引にブロックチェーンを用いることで、資金移動や決済の即時化と低コスト化を実現する、というもの。ブロックチェーンは中央銀行(ドルの場合は米連邦準備銀行、ユーロの場合は欧州中銀)によって集中管理し、システムに参加するプレイヤーに公開とし、一定の手続きを通して記入可能とします。

例として、この構想を日銀が実現した場合にどうなるかを考えてみるとわかりやすいかと思います。私たちは既に、「お金」を、財布の中のお札と硬貨、そして銀行口座の残高という数値データ、など複数の形態で保有しています。それぞれの形態にできること・できないことがありますが、私たちはそれらを全て「お金」と認識していて、その単位も「円」です。この構想が実現すると、「お金」の保有形態に「デジタル通貨」という新たな形態が出現します。デジタル通貨として保有している「日本円」の取引は、日銀の運営するブロックチェーンへの書き込みによって確定します。ビットコインと同様に即時決済することができ、また仲介業者がいないことから低コストで資金移動を行うことができるのです。米IBMの構想では、このデジタル通貨は、ウォレットアプリによって銀行口座と紐づけられているとのことですので、口座残高とデジタル通貨は相互に変換可能と想像できます。

ビットコインとの相違点としては以下が挙げられます。

  • ビットコインは新たな通貨。デジタル通貨は、既存通貨の新形態にすぎない。
  • ビットコインの供給はビットコインシステムが管理しており、「採掘」によって通貨供給される。デジタル通貨は中央銀行によって従来どおり通貨供給される。

ロイター報道ではIBMの議論相手として米連邦準備銀行が挙げられていますが、英イングランド銀行も2014年9月の報告書にて、ブロックチェーンのような分散取引台帳技術と「重要なイノベーション」と位置付けており、その活用を今後の重要研究テーマの一つとしています。中央銀行にとっても消費者にとっても利点のあるシステムにするにはどうすべきか、という観点で議論が進められている模様です。

欧米で盛り上がりを見せているビットコインとブロックチェーン。日本の決済業界は2020年オリンピック/パラリンピックに向けての動きが活発ですが、ブロックチェーンという新技術で円貨と決済をどう変えていくべきか、我々も議論すべき時期にきているようです。

参考情報

この記事の著者

森岡 剛

株式会社インフキュリオン/主席アナリスト/2014年より調査分析業務の中核を担う。特に決済とフィンテックに関する海外事例分析に定評。戦略コンサルティングにおけるアドバイザーを務める一方、雑誌やWebメディアにて情報発信も行う。Twitterアカウント(@infmorioka)でも発信中。

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